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広いベッドの上で寝返りを打つと、カーテンの隙間からの太陽の光の刺激で欠伸をしながら目を開ける。隣で寝ている晃は、まだ目覚めていないようだった。
普段、恥ずかしくてジッと顔を見つめることが出来ない彩は、ここぞとばかりに晃の顔のパーツの1つ1つを確認するように見ていた。
未だに、大人でカッコよくて、仕事も出来て、そして御曹司の晃が、なんの変哲もない自分のことを好いてくれているのが信じられないでいる。
今まで一度も付き合ったことのない彩の初めての恋人が、こんなにハイスペックでいいのだろうかとすら思うのだ。
(もし、別れたら僕はどうなるのかなぁ……)
捨てられる未来を想像するだけでゾっとする。
前は、一生一人でいるんだろうと漠然と思っていた。でも、晃と出会い、親しくなって、付き合うことになり、そして今は家族よりも一緒にいる時間が長い。
この関係が終わって、急に一人にさせられたら孤独で押しつぶされてしまうだろう。
手を伸ばせばすぐ触れられる位置にいるのに、まだまだ自分にとっては高嶺の花なのだ。
ふぅーと息を吐き、時計を見る。
6時18分――。
真治は起きているだろうか。
晃がおきる前に、真治に昼食を一緒に食べようと打診しようと思い、ベッドの近くに置いていた鞄に手を掛けスマートフォンを取り出してメッセージを打つ。
『おはよ。朝早くにごめん。今日、久々にお昼ご飯一緒にたべない?』
すると、すぐ既読になりあっという間に返事が来た。
『おはよう。いいぞ。じゃあ、昼頃に経理部へ迎えにいくから、待ってろ』
『わかった。じゃあ、お昼にね』
真治とのやり取りを終えた彩は、晃の顔をチラッと見て、まだ起きていないことを確認する。そして、再びスマートフォンを鞄の中にしまおうとしたその時、隣で寝ていた晃が身じろいだ。
焦った彩は咄嗟に、カバンへスマートフォンを投げ入れる。そして、何もなかったような顔で声をかけた。
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