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【キス大作戦】キスの日SS
――……僕だってああいうことをしたい。
それは、昨日、晃の部屋で見たテレビ番組がきっかけだった。
いつものように仕事を終えて帰ってくる晃を部屋で出迎えるために仕事を定時で終え、部屋にやってきた。
本来なら料理をして出迎えたいところだが、不器用かつ晃の方が遥かに料理の腕前も超一流で、「なんにもしなくていいから、家で待っててくれ。それだけで俺は嬉しい」と言われてしまったら何も出来ない。
しかも、彩が「料理教室に通いたい」と伝えても「そんなことしなくていい。お前は俺のそばにいろ」と言われ許してもらえなかった。
だから、彩がこの部屋ですることと言えば、風呂掃除とお茶を飲みながらテレビを見るくらいなもので。
そんな手持ち無沙汰の彩が、お茶を啜りながらしかたがなくテレビの特集番組を見ていると『キスの日』という文字が右上に表示されていた。
「キスの日?」
そんな日があるのかと、首を傾げた。
最近、毎日が記念日とか言って語呂合わせで記念日を量産しているようだが、テレビの中の芸能人が伝えた日にちがどうも解せない。
なんたって、そのキスの日とやらが5月23日なのだ。
「えっとー、ご、ふ? に……かな? で、み……、難しいな。後ろからかなぁ?
何度も数字を日本語に当てはめてみる。中々しっくりくるものが見つけられないでいると、急に頭に浮かんだ言葉に微笑んだ。
「あっ! 3は、密着するで、2は二人がで、5は豪快にキスする?」
すごい発明でも思いついたかのように、目を輝かせ何度も頷く。
「僕って、天才じゃない? 密着する二人が豪快にキスをするって。やばい、誰かに教えてあげたい」
でも、そもそもなんでそんな語呂合わせの語句が〝キスの日〟なんだろうと疑問に立ち返る。けれど、テレビの特集番組は5月23日のキスの日に関する由来は一切話さず、キスのシチュエーションで持ちきりだった。言葉遊びも終わった彩は、テレビに視線を戻すと――。
「な、な……」
赤裸々に語られるキスのシチュエーションは、晃しか経験のない彩には衝撃だった。しかも、再現VTRまであったもんだから、初心者の彩にはAVを見せられているようで、恥かしく思いながらも目が離せなかった。
――もっと見たい。
ソファーで脚を抱えて座っていた彩は、急に立ち上がり吸い寄せられるようにテレビに近づいていく。そして、テレビの前で立ち止まり正座をしてテレビの中で繰り広げられている他人のキスを瞬きもせずに凝視した。
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