第一章  -癒えない傷口-

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「じゃあ、そのお前の理論を元にして考えるとしても、飛ばされた先が一年前で、場所が叶多の地元というのは、どう説明付ける?」 「それは……」  ふと、颯真は口をつぐみ、次いで何かを振り払うように頭を二、三度振った。 「亀裂はただの亀裂だ。それに方向性を付け加えるには、何らかの意思が必要になる。つまり、飛ばされた先の時間や場所は、そこに行きたいという意思の表れだ。俺達二人のうち、どちらかがそれを強く望んだんだ。無意識のうちに」  どちらかが。  いや、恐らくは叶多が。  何故なら、少なくとも颯真には過去へ戻りたい理由も、叶多の地元へ行きたい理由もない。 「だから時間を飛んだ原因は、恐らく叶多の幼馴染みだろうと思われる、その少年の事故を防ぐため……と言いたいのか? お前は」 「それ以外、ないだろうが」  これで颯真がいきなり叶多が転校してきた理由や、その事故のことを言いだした理由がわかった、と結月は小さく頷いた。  ただ、それでもまだ多少納得のいかない部分は残る。結月は探るような視線を颯真へと向けた。 「お前の言いたいことはわかるが、そうだとしても、では、どうして叶多はあの瞬間、そんなことを思いついたんだ」 「知らねえよ。別に飛ばされる前に地元がどうとかなんて、そんな会話もしてないし」 「そうは言っても何かあったはずだ。叶多が過去へ戻りたいと望むきっかけになるような」 「きっかけねえ……」  飛ばされる寸前になにがあったか。 「…………!」  突然颯真は思いついたようにハッとなって顔を上げた。
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