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「そうだ、あの時、逃げ遅れた子供がいたんだ。母親が“まさと”って叫んでたから、名前はまさとだ。叶多はそれを聞いて……」
「……ということは」
「あいつの…一年前に亡くなったっていう叶多の幼馴染みの名前は……」
「間違いない、まさとだ!」
颯真と結月が異口同音に叫んだ。
やっとわかった。あの時の叶多の微妙な表情の意味が。
助けられなかったまさとと、助けられたまさとが、叶多の中で重なったのだ。
「……ま…さと……?」
と、その時二段ベッドの上から微かな声が聞こえてきた。
叶多の声だった。
「叶多! 目が覚めたのか!?」
飛び上がるように立ち上がり、颯真が叶多のベッドを覗き込む。叶多はまだ半分意識が朦朧とした状態なのか、ぼんやりとした表情のままそれでもうっすらと目を開けていた。
「ああ、よかった。大丈夫か? どっか痛むところはないか?」
「痛むって……えっと……」
「あと、気分はどうだ? 頭痛や吐き気はあるか?」
「別に……なんとも……っていうか、いったいどうしたの?」
矢継ぎ早に質問責めにする颯真に叶多は戸惑ったような視線を向けた。そしてそのまま身体を起こそうとし、次の瞬間背中に走った激痛の為、一気に顔をしかめる。
「……!」
急いで颯真が手を差し出し、叶多の身体を支えた。
「大丈夫か?」
「あ……うん」
颯真に支えてもらいながら叶多はそのまま再びゆっくりとベッドに身を横たえた。
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