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「背中、まだ痛むか?」
「そう…だね。でも、僕……いつ怪我したんだろう」
「え?」
「もしかして何も覚えてないのか?」
颯真の後ろから結月が珍しく大声をあげたので、叶多の視線が結月へと向けられた。
「何もって……?」
「てめえ、やっぱりホラ吹いたのか?」
「違うっつってんだろ」
すかさず大和が颯真に詰め寄るのを無視して、結月はのしかかるように叶多のベッドに身を寄せた。
「叶多、ゆっくり考えながらでいいから答えてくれ。何をどこまで覚えている?」
「どこまでって……」
「俺と一緒に買い出しに出かけたのは覚えてるだろう?」
結月のうしろから伸びあがるようにして颯真が声をあげた。
「ああ、そう言えば……えっと……みんなに買いだし頼まれて……」
「そうそう」
「最後に颯真が本屋に寄りたいって言ったから、地下街から上の大通りにあがって……」
「その大通りで何があったか覚えてるか?」
「えっと……確か…事故が……車の接触事故があったんだ」
ほらみろといったふうに颯真が大和を振り返った。
「急いで、現場に駆けつけて……男の子が一人、崩れたブロック壁の下敷きになってたんで、助けてあげて……」
「その子の名前、覚えてるか?」
「名前?……えっと……」
そこで叶多の言葉が途切れた。
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