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「なに…言ってんだ。なんだよ。それ」
「なにって…だから罪だよ」
颯真の眉間にしわが寄る。叶多の目は逸らされたままだ。
「どうしたんだよ、お前。あれは事故だろ?」
「……そう…だね。あれは事故だよ」
「だったらお前のどこに罪があるんだよ」
「…………」
「お前は何も悪くない。それにお前は助けたじゃないか。お前は、本当は死ぬはずだった正人の命を救ったんだぞ。罪どころか表彰されてもいいくらいじゃないか」
「それは……違う」
「……え?」
「少し、違うよ。颯真」
そう言って叶多は、微かな笑みを浮かべた。
「本当は死ななくてもよかったはずの正人を殺したのは僕だ。だから正人を救っただけじゃ僕の罪はなくならない。せいぜいゼロに戻っただけ。いや、ゼロは無ってことだから、それも違うかな?」
「…………」
叶多が何を言い出しているのかわからず、颯真はただ困ったように眉を寄せた。
「あの日、僕らは二人で朝早くサイクリングに出かけたんだ。でも山の中腹に差し掛かったところで正人の自転車がパンクしちゃって……」
そうして叶多はとつとつとあの日の事故のことを語りだした。
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