第一章  -癒えない傷口-

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「そんなの俺だってそう考えるさ。別におかしいことはないんじゃないか?」  当然のごとくそう言った颯真に叶多は微妙な表情をする。 「だとしても、僕は自分が楽をしたかったから、正人を一人で行かせたのは本当だ」 「…………」 「急いで行ってくるから、昼寝でもして待っててくれ。正人にそう言われて、僕はその言葉通り本当にバカみたいに呑気にしてた」 「…………」 「でも、なかなか正人が戻ってこなくて。さすがに何かあったのかと思って、僕が正人を追って元来た道を引き返したのは、彼が自転車から転落してから、ゆうに二時間は経過してからだった」 「…………」  正人の死の原因は、頭を打ったことによる出血多量だったらしい。そしてその最大の原因は、発見が遅れたためだ。あと一時間早く救急隊が駆けつけていれば、正人は助かったのだと。  叶多は低く、つぶやくような声でそう言うと、項垂れるように首を前へ落とした。  正人の生死を分けた一時間。  悔やんでも悔やみきれない一時間。  もう二度と取り返しがつかない一時間。 「僕はね、彼が頭を打って血を流していた瞬間、呑気に携帯で音楽を聞きながら木陰で休んでいたんだ。彼が生と死の境を彷徨っていた瞬間、彼の帰りが遅いなあなんて考えながら大あくびをしていたんだ」 「……でも、それは、お前の所為じゃないだろう? お前は知らなかったんだから」
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