第一章  -癒えない傷口-

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 叶多は静かに首を振った。 「知らなかったから。気付かなかったからって、そんなの言い訳だ。僕が、そうすることを選んだんだから、あれは僕の所為なんだ」 「そうじゃないって」 「だから僕は人殺しなんだ」 「……!」  正人の死は、叶多の中に存在する罪の結晶。  叶多は、この一年間、ずっと。  ずっと自分が正人を死に追いやったんだと考えていたのだ。  自分さえあの時、一緒に戻っていれば。いや、そうでなくとも、もう少し早く感づいていれば。あとほんの少し早く動き出していれば。  そうすれば正人を救えたかもしれないのに。 「で……でも、あの事故はもうなくなった。起こらなかったんだ」 「だからこそ…だよ」  そうつぶやきながら、やはり叶多は微かに笑っていた。  もうほかにどうしようもなくて。  颯真にはそんな感じの笑顔に見えた。 「あったことをなかったことにして、事故そのものをなくしたとしても、僕が正人を殺したってことは事実だ」
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