第二章  -消えた記憶-

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 やがて颯真は諦めたようにため息をつくと、この心のもやもやを解消する為に、もう一度ゆっくりと部屋の中を見回した。  見慣れた寮の自分の部屋。  二人部屋だが、今同居人はいないので、二段ベッドの上は空いたまま。  別に特に何も変わった様子は見受けられない。 「……って……そう…じゃない」  しばらくの間じっと二段ベッドの上段を見上げていた颯真の目が、突然大きく見開かれた。そして今度こそバタンっと大きな音をたてて部屋のドアを開ける。 「結月! 来てくれ!」  大声で結月の名を呼んだ後、颯真は何かを探すように部屋の中をあちこち掻き回しだした。 「どうした、颯真」  突然の颯真の叫び声に無理矢理たたき起こされた形になった結月は、もろに不機嫌そうな顔をして自分の部屋から出てくると、ドアが開いたままになっていた颯真の部屋へと顔を覗かせた。 「いったい何事だ。朝っぱらから……」 「結月! 叶多が消えた!」  颯真が真っ青な顔をして結月を見た。 「……はぁ?」  対する結月は怪訝そうな顔をして颯真を見返している。そして、次に結月の口から信じられない言葉が飛び出した。
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