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叶多が消えた。
この部屋からも、結月達の記憶の中からも。
叶多が消えた。
颯真は、自分の身体が震えだすのを止めることが出来ず、再び床にしゃがみ込んだ。
「お…おい、颯真、大丈夫か」
慌てて結月が颯真の身体に手を伸ばす。
「とりあえず今の状態じゃ何がなんだかちっともわからん。順を追って説明してくれ。ちゃんと聞いてやるから」
結月の言葉に颯真がゆっくりと顔をあげた。だが視線はまだ不安げに揺らいだままだ。
「聞いて、信じてくれるのか?」
「信じる信じないはお前の話を聞いてからだ」
「…………」
安心させるようにポンッと颯真の肩を叩き、支えるようにして座らせると、結月は大和を促して自分達も颯真の正面に座り込んだ。
「とりあえず話せ。少なくとも俺達はお前が意味もなく、こんなわけのわからないことを言いだす奴だとは思っていないから」
颯真は心配そうに自分を覗き込んでいる結月を、そして大和の顔を見上げた。結月も大和もその視線を真正面から受け止めてくれている。
ほんの少し安心して、颯真はようやく自分だけが覚えている叶多のことを話すことに決めた。
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