第二章  -消えた記憶-

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「ちょっと待て……えっ?」  大和が探るように結月を見、颯真を見、そして確かめるように自分のおでこに手を当てた。 「叶多っつったっけ? 叶多……だろ」 「そうだ、叶多だよ」 「……転入生……だよな」 「そう」 「けっこう可愛い顔して……でも意外に運動神経良くて」 「そうだよ。去年の体育祭のリレーでアンカー走った」 「……で、俺、負けたんだよ。首の差で。っつったら、いや、一馬身は差がついてたぞって」 「お前達は馬か。ここは競馬場か」  呆れたように結月がつぶやくと、とたん大和が結月を指さし叫んだ。 「って言われたんだよ、あん時も!」 「…………!」 「思い出した……んだな?」  颯真が探るような視線を二人に向けると、結月と大和はお互い目を見合わせ、小さく頷きあった。 「なんか、まだ混乱してるけど確かにいた。俺、お前の言う叶多って奴のこと知ってる」 「俺も、颯真と同室は大変だろうが、頼むぞって言った覚えが……」 「あと花見にも行ったよな、先月だっけ」 「そうだ。あの時は授業を抜け出して行ったんだ」 「最初、結月と叶多は俺達を止めに来たんだけど、結局一緒に行くことになって、これが本当のミイラ取りがミイラになるってやつだって……」
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