第二章  -消えた記憶-

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 次々と出てくる叶多との思い出話に、颯真がようやく安心したように息を吐いた。そして改めて居住まいを正し、ゆっくりと二人の顔を見回した。 「じゃあ、改めて俺が言ったことをどう思う? マジでよく考えてくれ」 「どうって……半分納得出来て、半分理解不能って感じだよな……いきなりタイムマシンって言われてもさあ」 「マシンじゃなくて、タイムスリップな。機械は使ってない」 「同じことだよ」  大和が腕を組みながら答えると、結月も同じように頷いた。 「確かに……ただ、なんと言うか記憶が重複してるような……そんな気はする」 「記憶が重複って具体的には?」 「お前の言うとおり、叶多のことを覚えてる俺と、俺は叶多には出逢っていないんだから知らなくて当然って考えてる俺が心の中に混在してるみたいな感じと言えばいいか……」  うまく説明出来なくて、多少戸惑ったふうにそう言うと、結月はこれでいいか、と颯真を見た。  重複した二つの記憶。  片方は叶多のことを知っていて、もう片方は叶多のことを知らない。  まさにパラレルワールドだ。 「つまり、俺達の記憶と過去が重複しちまってるってことだよな」 「なんだよそれ?」  颯真の言葉に、大和がきょとんとした顔で首をかしげる。 「言っただろう。ガソリンスタンドでの爆発によって、俺と叶多が過去へ飛ばされたんだって。そこでの叶多の行動が結果として俺達の過去を変えてしまったんだ。つまり叶多が地元を離れたいと思うきっかけになった事故そのものがなくなった所為で、叶多は前の高校を辞めることも、こっちに転校してくることもなくなったってこと」 「だから、俺達とも出逢わなかったという過去が新たに出来たということか?」
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