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第二章 -消えた記憶-
その朝、颯真はものすごい頭痛と共に目を覚ました。
時計を見ると、午前六時前。目覚ましも鳴らないような時間帯だ。もちろん周りのどの部屋からも物音ひとつ聞こえない。みんなまだぐっすり眠っているのだろう。
休日の朝なのだからもっとゆっくり眠っていていいはずの日に、こんなに早く目が覚めるなんて、俺もいよいよヤキがまわったかな等と考えながら、颯真は勢い良く起きあがると、トンっと軽やかな音をたてて床に降り立った。
ところで動きが止まる。
「あれ……?」
何かとても大事なことを忘れているような気がして、颯真は部屋の中を見回した。でも、目に入るところには何も引っ掛かってくるものはない。しばらく思案した颯真は、結局気のせいだろうと判断してタオルを手に部屋を出ようとしたところで、再び立ち止まった。
「…………?」
やはり何かを忘れているような気がした。でも、それが何なのかはわからない。
夢見でも悪かったのかなと、気を取り直し、再度ドアノブに手をかけるが、どうしても部屋を出る気持ちが起きない。
いったいなんなんだ、これは。
「……………」
何か、どうしてかわからないが、気になって仕方ない。
何か、とても、とても大切なことを忘れている。でもそれが何なのか思い出せない。
それはひどく気持ちの悪い現象だった。
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