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夢のようだとは思った。
ただ、まだ手に残る柔らかな肌の感触や耳に残る声、目にしたことのすべては夢なんかではない。一度知ってしまうとそう簡単には諦められない。
俺は、明らかに昨日までとは違う。
思い出してもらえるのかわからない。
それならば、どうやってその気になってもらうかを考えるしかない。
服はまだ乾いていないだろう。
野々村さんが帰れないのは、随分とこちらに有利だ。
昨日の続きを知りたい。忘れてしまったのなら、もう一度感じさせたい。
まずはいったん引こう。
食事でもしながら、徐々に断れない状況へ追い込んでいく。
今はまだ、夢のようで夢ではない夢を、現実にするために俺はあらゆる手をつくす。 <了>
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