【特別番外編】夢のようで夢ではない夢

52/52
6986人が本棚に入れています
本棚に追加
/323ページ
 夢のようだとは思った。  ただ、まだ手に残る柔らかな肌の感触や耳に残る声、目にしたことのすべては夢なんかではない。一度知ってしまうとそう簡単には諦められない。  俺は、明らかに昨日までとは違う。  思い出してもらえるのかわからない。  それならば、どうやってその気になってもらうかを考えるしかない。  服はまだ乾いていないだろう。  野々村さんが帰れないのは、随分とこちらに有利だ。  昨日の続きを知りたい。忘れてしまったのなら、もう一度感じさせたい。  まずはいったん引こう。  食事でもしながら、徐々に断れない状況へ追い込んでいく。  今はまだ、夢のようで夢ではない夢を、現実にするために俺はあらゆる手をつくす。   <了>
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!