6988人が本棚に入れています
本棚に追加
/323ページ
区役所へ向かうタクシーの中で野々村さんからストップがかかった。
「やっぱり、もうちょっとゴロの良い日付がいいかも」
日付も変わり、6月19日になった。
「あと、十日早ければまだ良かったんやけど」
69の日……
野々村さんから、大胆な発言が飛び出した。
「でも転げ落ちそうか……」
「何が?」
「ローリング・ストーンズのイメージ」
真っ赤なベロのマークが頭に浮かぶ。
「あっ、そっちね…」
どうも俺の脳は汚染されている。
「7月3日よくない?」
「そうか?」
「波に乗ってる感じするやん」
波に飲み込まれるとか、そういう発想はないらしい。
区役所までそう遠くない。タクシーの運転手は何も訊いてこないが、内心はっきりしろと思っているだろう。
「すいません。区役所やめて沓掛の方へ向かって貰えますか?」
「沓掛ですね」
これから何をする気なのか、運転手にはもうバレてしまっただろう。
最初のコメントを投稿しよう!