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荻原さんはしてないって言っていた。それなのに、しばらく味わっていないはずの快感の余韻が、体のあちこちに残っている気がしてきた。
バスルームからでた。
ショーツは乾いているが、ブラは半乾きだ。ノーブラで過ごすよりはましだと思い着けた。
借りたTシャツを被る。
髪は洗わなかった。歯ブラシは持ち歩いているので、バッグに取りに行くことにした。リビングダイニングに戻った。
食卓にトーストやコーヒーが並んでいる。キッチンから、両手にお皿を持った荻原さんが出てきた。
目が合う。
お互い、何も言えず、目も反らせずにつっ立っていた。
「ああ、ごめん、ちょうど出来たし、座って」
頷いて食卓に近づいていく。
トーストとバターの香りも、コーヒーの香りも、つい、何度も嗅ぎたくなる。
お皿の上には、きれいな形のプレーンオムレツとブロッコリーやプチトマトが載っている。
彩りまで気を使ってある。女子力の高さに驚く。
とりあえず、席についた。
荻原さんも座った。「どうぞ」と言われる。
私は食べる前に謝ることにした。
「あの……いろいろ迷惑をかけてごめんなさい」
「別に、迷惑やとは思ってへんけど」
「じゃあ、お世話かけて……」
荻原さんが笑った。
「何なん、調子狂うやんか。もうええから食べてや。冷める」
私は頷いた。
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