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宴の後
まぶたに、朝の光を感じていた。目は開けられない。覚める前の意識の中で、人の温もりって気持ちいいと思った。包み込まれている。脇にかかる腕の重みも……
おかしいと気づく。
私には今、彼氏はいなかった。
嫌な予感がする。いやいや、予感ではない。実感だ。
この感じは服を着ていない。私も……相手も……。
「んー」
肩に息がかかる。抱き寄せられて、余計に密着する。脚に、硬いものが当たった。
恐ろしくて、目が開けられない。
相手は、行きずりでないなら、荻原さんしかない。それくらいは覚えている。
胸に手が伸びてきた。慌てて腕を押さえる。
「んん?」
呻いたと思ったら、いきなり大きな声を出して立ち上がった。
掛け布団が捲れ上がる。見覚えのないシーツだった。
私は慌てて手を伸ばそうとした。布団のはしを目で追う。ベッドから落ちていきそうだ。届かなかった。
顔をあげると、荻原さんの股間が視界に入り、慌てて顔を手でおおった。
「違う!」
荻原さんが焦って言う。
「朝やし」
そんなことはどうでもいい。
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