名前のない関係

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名前のない関係

「どうされました? 朝からもう三度目ですよ」  沢村君から、ため息について指摘される。さっき定例のミーティングが終わったところだ。 「まあ、ちょっといろいろあって」 「金曜日、随分酔ってらっしゃいましたしね」  また大きなため息がこぼれる。 「沢村君にも絡んじゃったね。ごめんなさい」 「いえ、楽しかったので」  本当に、王子スマイルには癒やされる。 「荻原さんと……」 「な、何?」  名前が出てきて狼狽えてしまう。 「漫画家の先生とのお話はできたんですか?」  実際はそれほどできていなかったけれど、頷いた。 「野々村さん、今日、お昼過ぎって少しお時間ありませんか?」  アポは夕方からだった。 「空いてるけど?」 「指輪を買いに行きたいので、ご一緒していただけたらと思っていまして」  女除けの指輪だろう。しかし、私と沢村君でジュエリーショップに行ったら、親子で来たかと思われる。  それでも、少し煌びやかな物を眺めて、気分転換するのも良い気がした。
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