たとえばto codaで飛んだ先にfineがないみたいな 

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  彼女は尚も食い下がる。どうしてこんなことに、と恨みがましい気持ちが湧き上がるが、きっと僕が悪い。彼女にバレた。内緒ごとはなしだという暗黙のルールで共に過ごした時間はあまりにも長い。指折り数えるまでもなく、一歳からの付き合いだと思い出せばすでに十六年だ。まあそのうちの後半数年、僕は暗黙のルールを破っていたわけだけれども。  「もう、いいだろ?いまさらだよ」  そう、いまさらなのだ。僕の内緒ごとはすでに過去のもので、ここで僕がどんなに熱くそのことについて語ったとしても、おそらく何も変わらないだろう。  「いまさらって……、ぜんぜんわからないよ」  「わからなくていいの」  からっぽになったシェイクのカップをこれ見よがしに振って、僕は席を立つ。わざわざ傷をえぐるようなまねはしたくない。  「傷心なもんで。これにて失礼」  こんな時くらい自分を大事にしてもいいはずだ。「家に帰ってふて寝でもするさ」と、背を向け一歩踏み出すと彼女がやけに深刻そうな声をかけた。  「もしかして、キスしたいとか、そう思ったりした?」  本当に、勘弁して欲しい。隣のお姉さんはポテトを口に忙しく運びながらスマホをみているけど、確実に耳は僕らの会話に釘付けだ。  「当たり前だろ。もう、しばらく話しかけてくるなよ。そっとしといてくれ」  失恋である。想いを寄せていた人には想い人がいて、つまりは横恋慕というやつだった。僕の答えは、僕と彼女のそれまでを叩き潰すようなものだったらしい。いや、数年前から壊れていたことが、とうとう明らかになったっというのが正しい。     
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