新訳走れメロス

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分娩室へ案内されると、妻はまさにうんうん苦しんでいる最中だった。 「大丈夫か?今来たからな。」 僕の声かけに妻は安心したかのように見えた。 僕ら二人の子供なのにどうして妻ばかり痛みに耐えねばならないのか、代わってやりたいと思うほど 妻はぐったりとしていた。 汗で髪の毛が額に張り付いている。 言われるがままに背中をさすり、声をかけ、腰をもんだり足をもんだりした。 何時間かそんなことが続いた。 いや、実際はそんなにかからなかったのかもしれない、が僕らには何十時間も経っているように思えた。 それからしばらくして 「でてきましたよ」と、看護婦が声をかけながら、ついに僕達の娘が誕生した。、とり上げられて、タオルで拭かれてゆく娘のちいさな両手に、かじりついた。 産まれてきてくれてありがとう。 頑張ってくれてありがとう。 妻の頬は涙で濡れていて今まで見たどの顔よりも美しかった。
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