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一方、風に飛ばされた帽子は、とある駅の線路の上に落ちた。ホームに待つ人々が指を差す中、呼ばれてやって来た駅員が拾い上げようとする。ところが、帽子は悪戯な風に乗って踊りながら、からかうように逃げ回り続けた。まるでコメディ映画の一幕のような光景。辺りでは笑い声が響いていたが、おかげで列車には遅延が生じるはめになった。
その少し先の駅で、スーツ姿の一人の男が電車を待っていた。世間は一般的に休日だが、大きなプロジェクトを抱える彼は忙しく、今も通勤の途中。しかも、仕事を片付けるのに明け方までかかってしまい、少々お疲れのご様子だった。何度もあくびをしながら、ホームにぼうっと立ち尽くしている。
「あれ? 電車、遅れているのか」
頭上の電光掲示板を見てようやく気付いた男は、列車を待つ間、駅のホームにある売店へ立ち寄ることにした。そして、眠気覚ましのガムや栄養剤、コーヒーなどを買う。それらを口にしながら、ストレッチをして、束の間の休息をとった。
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