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それから男は、どこを通り、どこで遊んだのかを二人に尋ねた。そして、地道に一つずつ辿りながら、キョロキョロと赤い色を探して回る。すると、砂場にやって来た時、小さな赤い三角形が、砂の中からひょっこり顔を出しているのを見つけた。
「ひょっとして、これじゃないか?」
摘まみ上げると、確かにそれは、見覚えのある色と形をしたリボン。
「あった! 私のリボン!」
少女は大きな声で言ってそれに飛び付いた。砂を払うこともせず、大事そうに抱きしめる。そして、
「ありがとう、お兄ちゃん!」
と、その日の青空と太陽にも負けない、晴れやかな笑顔で言った。
「……ああ、いや。その、どういたしまして……」
その眩しさに思わず目を逸らし、男が照れくさそうに笑うと、少女は唐突に右手を突き出す。
「これあげる」
差し出されたのは、可愛らしい包装の飴玉だった。
二人の少女は、無邪気に笑いながら駆けて行く。男はそれを見届けると、空を見上げ、一度大きく息を吐いた。それから、貰った飴玉を口に放り込み、小さく微笑んで、ゆっくりと自分のペースで歩き出す。
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