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6月。
右手の怪我も回復し、病院の先生からもやっと練習復帰許可が下りた。
今日からみんなと練習できる。
私はこの日を心待ちにしていた。
しかし不安も大きい。
みんなと別メニューでしていた間、私は体力トレーニングしかしていない。
体幹や筋力はケガをする前よりもしっかりした感覚はあるが、守備やバッティングの感覚は相当鈍っているだろう。
レギュラーをとられないよう気持ちを引き締めていかないといけない。
それと、練習復帰することで不安なことがもう一つ。
尚子との個別メニューが終わる。
復帰までの間私たちは毎日2人で個別メニューをこなしながら時間を一緒にした。
それがなくなるので2人の時間も当然になくなる。
素直に寂しかった。
個別メニューをしていく中で自然と距離も縮まり、今では一番気の合う後輩になっていた。
ケガからの復帰によってせっかく築いてきた仲にまた距離ができてしまうのかが心配だった。
ありがたいことに尚子も私のことを慕ってくれているのがわかる。
だからこそ、尚子が他の子と同じように、一時だけの好意になってしまうんじゃないかと不安になる。
疑いたくないが、疑ってしまう。
「はあ…」
人を信じれない心になってしまった自分にため息が出る。
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