最終章

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 引き続き暗号解読に勤しむ清水だったが、途中から考え過ぎて突発的に子供の様な閃きから、数字をそのまま平仮名の様に読み始めた。  人は万策尽きたら幼稚な行動に出るらしい。  2085 1211920 16175 156 2085 131793 156 1415205 2151511  にれやご? ひふひひくにお……意味分からん。  でも2085が二つ、156も二つある。  これは何か意味がある筈なんだけれども……。  悶々と考えていた清水は、時間の経過を忘れてふと窓の外を見遣った。  見た事のない景色が急速に流れて、トンネルに入った途端、暗転したかのように一瞬で車内が暗くなる。  今、どの辺りなのだろうか? とトンネルの切れ目を待っていると、開けた視界には薄氷でも張っていそうな二月の寒い海が広がっていた。  まだ夕暮れには早い昼下がり、曇天を映した様な鈍い煌めきは、見る角度によっては銀糸が揺蕩っている様にも見える。  霧を称えた水際から遠くに見える赤い鳥居が、山並に綺麗に整列していて、深く濃く眠る準備を終えた山々により一層華やかに映えている。  家の裏の雑木林は毎日見ているけれど、この辺りの山々は深淵と言う言葉が浮かぶほど、人の手の届かない色をしていて、距離を遠く感じさせた。  士朗と二人で見た夏の夕暮れの海とは違う、神秘的なその景色は見る人によっては美しく幻想的に映るだろうけれど、清水にとってはまるで違う世界へ来たのだと教えられている様で、その侘しさが心許なくさせてしまう。  離れるのは、やっぱり怖い――――。
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