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「そ、そっか……」
「だがらぁ……士朗さんにはぁ……嫌われたくないって思ってぇ……うわぁあぁん」
弁当屋でバイトを始めたのも、バイトを始めた士朗の真似をしたかったからで、清水の家に来る事は、自ら士朗に頼んだのだと有村は続けた。
「な、何で……?」
「士朗さんが……いつも、清水さんの事話してて……心配だ心配だって顔に書いてあんですもん……。俺が何か役に立てたらって、思うじゃないっすか! それに……いつか、清水さんにも謝んなきゃって……」
清水は内心、超がつく程バカで素直だ、と笑いそうになるのを必死で堪えた。
今までなら、一度自分を殴って怪我をさせた男と和解なんて、考えられない。
士朗がいるから、彼の事を受け入れる窓口が出来て、知れば知るほど嫌いにはなれなくなって行く。
落ち着いた有村と、その日は一つのカレーを半分こして食べた。
試験勉強で煮詰まっていた清水は、泣いたり笑ったり忙しい有村が、鉄砲玉みたいに喋るのをテレビでも見ているかのように黙って聞いていた。
清水より士朗の自宅に近い所に住んでいる有村は、時々士朗に会っている様だ。
携帯でのやり取りが増えた清水にとって、有村の話は士朗の事ばかりで、ある意味妬けてしまう。
でも有村は士朗と清水の関係を、親友くらいに思っているので、清水はそこはグッと堪えるしかない。
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