最終章

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 財布のカード入れの所に差し込んであるソレは、和泉が倒れたあの日、士朗が書いて渡してくれた短冊だ。 「わ、分かった……」 「清水さん、ファイトっすよ! すげぇ頑張ったんだから、絶対大丈夫っす!」 「うん、ありがとう……。行って来るね」 「はいっ! 行ってらっしゃいです!」  大手を振って派手に見送ってくれる有村と別れて、新幹線のホームまでエスカレーターを上がって行き、定刻に到着した新幹線へと乗り込んだ。  今日は和泉のお見舞いに行った時ほどの混雑は見られなかったが、清水はなるべく通路側の席に座りたくて、出来るだけ人が座り終わるまで出入り口付近で待ってから、一番出口に近い最後尾の通路側の席に深く腰掛けた。    相変わらずメガネにマスクで、傍から見れば自分が一番怪しいのではなかろうか、と清水は分かってはいる。  だが具合が悪くなるかも知れない、無いとは思うが何かしらあった時に、窓際の席だと逃げられないかもしれない、なんて考えたら小さな事でも実行せずにはいられないのだ。  席に着いてから、有村に言われていた通り財布の中に入れてあった“七夕のお守り”を取り出し、開いてみる。 「……何だ、コレ?」  そこには予想もしないものが書かれていた。
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