最終章

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 次に思い当たったのが年号だが、これも端から挫かれる。  2085年なんて、遠い未来過ぎて棺桶に片足突っ込んでいるはずだ。  超有名なカエサル式の暗号を数字化してみたり、ポケットベル方式で平文が出て来ないかと模索してみたものの、皆目見当もつかないハチャメチャな文章しか出て来ない。  解読しようと躍起になっている清水の携帯がピカピカ光っている。  マナーモードにしていた携帯には、士朗からのラインが届いていた。  〉もう乗ったかな? 怖くねぇ? 大丈夫?  〉大丈夫。意外と平気だよ。  〉なら、良かった。七夕のヤツ、煮詰まったら、シンプルに考えてみな。  〉シンプル?  そう返した清水の言葉に、少し間があって返事が来る。  〉そ、真面目過ぎると分かんなくなるぜ。  多分バイトの合間縫って、コッソリ連絡してくれているのだろうと思い当たって、清水は既読を付けたまま、返信を控えた。  心配してくれていたのだと分かるだけで、こんなに簡単に柔らかく解けるものだろうか。  敏感に張り詰めていた肌や、萎縮して硬くなっていた胸の内が、ゆっくりと空気が抜けて萎んで行く風船の様に緩まって行く。  だが、清水にはこの数字の羅列をどうシンプルに捕えたら良いのか、無秩序なものを綺麗に並べ替えろと言われている様で、全く糸口が掴めなかった。
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