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考えない様にして来た事を、目の前に突き付けられたような焦燥感に、清水はまた短冊へと視線を落とした。
小難しく考えるだろう事を知っていて、敢えてこんな風に暗号化して言いたい事を暗に伏して来る士朗に若干の腹立たしさを覚えた頃、清水はふと、思い立った。
士朗の事だから無意味にこんな事をしたりはしないだろう。
文字でこれを書かなかった事には意味があるのだろうと――――。
そう思い当たった清水は、多分きっとこれが、士朗の優しさの塊である事を確信した。
半年以上前から、士朗は今日の事を想定してこれを書いたのだと言う事。
そして敢えて、これを新幹線の中で解かせる様に仕向けたのだと言う事も。
七夕の時点ではまだ士朗の就職は決まっていなかったけれど、自分がバイトを始めれば見送りには行けても一緒に着いては行けないと、士朗は分かっていた。
だから安易には解けないこの暗号を、新幹線の中で解いてくれと言ったのだろう。
他の事に気を回す余裕など、無くなる様に。
自分の事でいっぱいいっぱいの清水にとって、士朗のそう言う所が、自分より大人だと思わざるを得ない。
腹立つくらい、カッコイイ。
全ては推測にすぎないけれど、そうとしか考えられない清水は、熱を上げる目頭をぎゅっと瞑った。
その程度の確信を持てる位には、清水と士朗の間にそれ相応の時間があったのだと気付かされる。
あの七夕の夜、士朗は確かに少し考えている様子はうかがえたけれど、何かメモを取るような素振りも見せずに、この短冊に願い事を書いていた。
と言う事は、空で考えられる程度の難易度であると言う事だ。
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