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高校に入ってから真面に人付き合いしてない清水は、誰かと一緒に帰るとか、誰かの家に行くとか言う事がなく、塾の時間が過ぎる間ずっと落ち着かなかった。
教壇に立った巽先生をぼんやり見ては、そう言えば似ている気がするとか、声がソックリだとか、そんな事ばかり考えてしまう。
でもどう見ても巽先生は三十代の半ばくらいにしか見えないので、士朗は相当若い時の子供と言うことになる。
「はい、では今日はここまで。次は――」
机の上を片付けて、士朗に言われていた塾の裏手にある駐輪場まで行くと、何やら喋り声が聞こえて足を止めた。
覗いた先には中学生の女の子と士朗がいた。
「良いじゃん、一緒に帰ろうよ。シロちゃんに会うの久しぶりだし」
「だからダメだって。今日は他に連れがいんだよ。つーか、腕離せっ、朋絵!」
「えー? どうせ同じ団地に帰るのにさぁ。それに連れって誰よ? いっつも一人でいる癖にさぁ」
「お前に関係ねぇだろ。早く帰れ、ガキ」
長い髪にセーラー服が良く似合う華奢で背の高い女の子だ。
目力の強い気の強そうな顔が、目尻の下がった緩い顔立ちの士朗の隣に並んでいると妙に絵になる。
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