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金曜の湯
その日は星空の良く見える金曜日だった。
私はようやく仕事を終え、会社から家に向かって歩いていた。
時刻は既に11時を回っており、私が普段乗っている電車はもう行ってしまった。
そのため私は、1週間の疲れを携えたままで会社から家まで徒歩20分の道のりを歩いていた。
辺りを包む静寂。
その中で響くのは私のカッ、カッ、というヒールの音だけだ。
しかし、不意に「カコーン」という、桶が床とぶつかった時の音が複数聞こえた。
一般家庭では考えられない音の数から私は不思議に思い、その音の元を辿ってみた。
するとそこには、今まで1度も見たことがない銭湯があった。
「金曜の湯」
そう書かれた銭湯は、都内にあるとは思えない、異様な空気を放っていた。
煌々と電気がついているわけではないのに、不思議と辺りが眩しく感じ、とてもきになる。そんな雰囲気だ。
私は気になって行ってみることにした。
入ってみると、中には誰もいなかった。
でも、誰かがいる気がする。
そう考えていると、番台から声をかけられた。
……誰もいないはずの番台から。
「おんやぁ、お前さん……さては人間だね?」
……おかしい。
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