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時計を見ると、針はもう4時43分を指していた。窓の外もだんだんとオレンジがかった色に染まっている。
「そんじゃあ、記事探しするか。」
おう、と威勢の良い声をあげて、健二は机の上に置いてあったデジカメをポケットに入れた。俺もカバンの中からメモ帳とボールペンを取り出した。いかにも新聞記者っぽいこのセットは入部したときからのお気に入りだ。
ドアを開ける音が聞こえた。健二はもう準備をすませたみたいだ。
「そんじゃ、俺トイレ行ってくるわ。拓也は先行ってろ。」
んー、という俺の返事を聞かずして、健二はさっさと部屋を出ていった。俺一人の部屋で、今度はキャッチボールを始めた野球部の声が小さく響いている。
俺は手に持っていたメモ帳とシャーペンをポケットに無理矢理ねじ込んで、開けっ放しになったドアをくぐった。
振り返って、ドアを閉める。「新聞部部室」と黒いマジックで直接書かれた傷だらけのドアが、小さくガチャリと音を立てた。
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