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こうして、急遽ルパンはルームメイトだった大塚を逮捕する事となった。
大塚の方も、ルパンに対する違和感を感じて居たので、今回のコソコソしたやり取りに疑惑を感じていた。
そしてルパンが仲間の幹部ではなく、敵である警察だった事を知り逃亡を図った。
ただそれを知ったルパンが、大塚に声を掛ける。
「待て!大塚啓治!逃げないでくれ!」
逮捕するつもりの上村が発する言葉としては、少し違和感がある口調に、大塚は思わず足を止める。
「お前の事は調べた。お前は確かに詐欺グループの一員だ。それは突き止めた。しかし調べたらお前の罪は微罪なんだ。今、逃亡すれば罪は重くなる!俺はお前と同居して、お前は悪い人間じゃないと知った。お前が詐欺グループに参加したのも、家族を養う為にしていた事だと知った。俺はお前に必要以上の罪を犯して欲しくないんだ。だから今俺に捕まってくれ!」
しかし大塚も黙って捕まるのは御免だ。
「このまま捕まったら、刑務所へ行かなくてはならない、そうしたら家族が路頭に迷う事になる。捕まれないよ」
「俺はお前を捕まえたら、裁判の際、情状酌量の証人として絶対出廷してやる。そうすれば初犯の大塚には執行猶予がつくはずだ。実刑にならなければ家族と離れる事もないし、やり直しが利く。俺はお前を見捨てない!だから俺を信じてくれ!」
ルパンの熱い言葉に、大塚は食い逃げ騒動の時の事を思い出していた。
ルパンは刑事なのに、食い逃げを俺に免じて見逃してくれた上に、俺の為にお金を持って戻って来てくれた。俺はあの時、ルパンを信用できる男だと見込んだのだった。
(そうだ。俺はルパンと信頼という名の友情を感じた。この男を信じてみよう)
「解ったよルパン。あんたを信用する。あんたにだったら捕まっても良いよ。どうか、どうか家族だけには迷惑が掛からないようにして下さい」
そう言って大塚啓治は、ルパン上村純平の前に手錠を掛けてくれるよう両腕を差し出した。
こうして、このシェアハウスでの、二人の不思議な共同生活は幕を降ろした。
了
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