刑事と怪盗?

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刑事と怪盗?

 城北区にある警視庁今泉警察署捜査二係は、管内を活動拠点にしていると思われる、振り込め詐欺グループ摘発の為に、極秘に内偵捜査を実施していた。  その結果、詐欺グループによって、警視庁管内(東洛都)と、隣県の彩魂県警両管内に跨るように、被害者が出ている事が判った。  そして内偵捜査の甲斐があり、遂にグループの犯行拠点の一つを突き止めたのだった。  がしかし、その場所は城北区と隣の彩魂県万座市の境を跨ぐように建てられたシェアハウスだった。  両自治体に跨っているのは、両都県で活動するのに、ちょうど中心となって活動し易いというのもあるかも知れないが、それよりも、警察の不備を突いた巧妙な意図が感じられた。  と言うのは、この国の警察は、警視庁や各県警察本部同士の縄張り意識が強く、自分たちの手柄となる事件には自分たちだけで手柄を独占しようとするし、逆に旨味の無い面倒な事件などは、出来る限り他に押し付け合おうとするなど、足の引っ張り合いが働くので、トラブルとなる境の現場は、警察が扱うのを躊躇うだろうという読みが働いているのが予想された。  ただ今回の犯行グループに於ける被害は、両都県に跨って甚大な額となっているので、面子(メンツ)や見栄を張っている場合ではなかったので、流石に合同で捜査に当たる事となった。 「うちの署から潜入捜査員を一人出すようにと上から命令があった。お前らの中で志願者は居るか?」  と、係長が捜査二係の捜査員たちを見渡し、問いかける。  皆が潜入捜査は面倒くさそうだと逡巡している中、 「はい!デカ長、私が志願致します!!」  そう勢いよく声を上げたのは、当二係切っての若手期待の星、上村純平捜査員だ。 「おー、ルパンか」  係長のその声で、同僚の捜査員たちは一斉に“ルパン”と呼ばれる男のほうを見る。  係長はルパンのヤル気満々な感じの申し出を見て、『これは面白い事になりそうだ』と、内心楽し気になり、思わず片頬をあげてしまう。  ルパンこと上村捜査員は、最近この警察署に配属して来た若手捜査員だが、仕事に情熱的で正義感も強いので、係長は特に目を掛けてやっていた。  今回も、この部署で早く結果を出したいという思いから、積極的に志願したようだった。  因みに、上村捜査員が何故“ルパン”と呼ばれているか?と言うと、その風貌である。
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