甘いささやき

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ぼんやりしていて、ジッと見られていることに気づき私は慌てて専務に声をかけた。 「どうされましたか?」 それでもジッと視線を向けてくる専務に、いたたまれず俯いた。 「何していたんだ?」 勤務中に携帯開いてたのがバレた? 「いえ……あの……」 「誰と?秀哉君?」 え?まさか乙ゲーまでバレた? それはヤバい! 必死に2次元オタクを隠してるのに! いつもよりなぜが凄みのある専務の言葉に、私はどう答えるべきかわからず唇を噛んだ。 「それをこっちによこせ」 手に握りしめていた携帯。私は慌てて首を振った。 「もうしませんから!」 そう言った私の言葉と同時に、グイっと手を引かれて携帯が専務の手の中へと移動した。 「あ……」 無表情でスマホの画面を見ていた専務の顔が、不敵な微笑みを浮かべたのを見て、恥ずかしさに涙が浮かんだ。 そんな私の耳元がふわりと温かくなった。 「千里好きだよ。今日は俺の腕の中にいろよ。チョコレートはお前だよ……って?」 秀哉君のイベントのセリフを、甘い大好きな声で言われて、私は真っ赤になって専務を見上げた。 「からかわないでください!勤務中にこんなの見ていたから罰ですか……?」 泣きそうになった私に、 「さあ?どう思う?」 ジッと私を見つめる瞳は、どこか妖艶で怖さすら覚えて私は、ギュっと唇を噛んだ。 チュッとリップ音を立てて唇に落とされたキスに私は呆然と専務を見上げた。 「これは貰っておくな」 私のカバンからいつのまにか出したチョコレートを手に、クスリと専務が微笑んだ。 「え……?専務?どういうことですか……?」 理解できずに聞いた私に、 「自分で考えろよ。そしてこの男に言ってもらってた言葉を、俺に言わせてみな」 そっと私の頬をひと撫でし、私の携帯を指さすと専務は部屋を後にした。 言ってもらってた言葉って……。こんな私だけど、もう少しだけ、3次元のあなたに頑張ってもいいんですか? ねえ、専務? End
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