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「はぁ、暑い。」日も暮れた夜とはいえ、8月は流石に暑い。
「大丈夫か?出番はまだ先だな。」うちわで私をあおぎながは汗を拭いてくれる裕ちゃん。
「ありがとうございます。貴方は大丈夫なんですか?」いつも自分より私を心配してくれる。こんなときでも。
「はぁ、今日は私がメインなんだけどなぁ、お姫様には敵わないか。」ニマニマしているあかねちゃん。
「もう、あかねちゃん!」私は真っ赤になって抗議する。
「いや、これは茜が正しいわ。こっちが赤くなるくらい恥ずかしいもん。」ギターの陽葵ちゃんに突っ込まれさらに赤くなる。
小学6年生のクリスマス。素人バンドフェスティバルであかねちゃんの歌を世に送り出すため、結成した「荻窪茜と愉快な仲間たち。」ギターを弾ける人を探していた私達の前に、ギターを引っ提げ颯爽と現れた女の子。何処かで噂を聞き付けたらしく、隣のクラスの軍神柊陽葵ちゃんが私達の仲間に なったのだ。
あかねちゃんの歌唱力は群を抜いていて、私達は優勝。夏の四日市祭り、諏訪公園の特設ステージ参加資格を得たのであった。
「けど、浴衣って暑いのね。」小学5年生の唯ちゃんがまいっている。
「男性用も結構大変だぞ。」裕ちゃんと同じように、この可愛い妹をうちわであおぐのは私の弟の椿。裕ちゃんの妹に好意を寄せる弟は、いつ告白するか迷っているようだ。はぁ、いいな。私は3年待ってるんだけどなぁ。さらに後3年待たされるとはこのときは思ってもみなかったけどさ。
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