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女の子だったらおれが、男の子だったら夏帆が名前を決める約束だった。妊娠六ヶ月の頃、九分九厘女の子だということが判明しておれは頭を悩ませることになる。
一発で読めて、漢字変換にも苦労しない名前というのが最低条件だった。
「私に似るといいですね。准一さんに似たらかわいそう」
「女の子は親父に似るっていうぞ。おれに似て目が大きくて凛とした美少女になるに違いない」
「馬鹿なこと言う前に鏡見てください。あと早く名前考えて。まだ時間あるとか思ってたら生まれちゃいますよ」
夏帆はたいぶ目立つようになったお腹を撫でた。
「そうそう。考えたんだけど、夏帆から一字取って夏希なんてどうかな。夏のように明るい未来に向けて希望あふれる人生を送れるように」
「夏帆ちゃんのようにかわいくなるように、を忘れてるのは惜しいですけど准一さんにしてはちゃんと考えてるみたいですね。でもこの子冬生まれですからね。そういうとこポンコツなんだから」
結局は夏帆が名前を決めた。長女菜月。読みは俺の案を採用してくれた。
それから三年後に生まれた長男賢一。准一から一字取ってくれたのかと思いきや、「私のように一番賢くありますように」とのことだった。
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