2、 〇グの愛しい王子さま

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ふわっと磯の香り。 「疲れたね。ぐっすりおやすみ」 彼はスースーと寝息を立て始める。 うそ。眠っちゃったの? 置いてけぼりにされたみたいで悲しくて、彼にしがみついて眠った。 夜中に目を覚ますと彼がいない。 慌てて、ベッドから飛び降りる。 キッチンのドアを開けると、テーブルにあったフライが無くなっている。 まさか、私を置いてお友達の所へ行ったの? この家に私だけ?……淋しい。 熱い雫がポタリと床に落ちた。 カチャカチャ……。 鍵を開ける音がした。 「あ、ごめん。起こしちゃったかい」 私は泣きながら彼の胸に飛び込んだ。 「ごめん、淋しかったのか?プレゼント届けてたんだ」 フライを? 「皆に喜ばれるんだ。僕のイカリング」 ああ、それで磯の香りがするのね。 この香り……私、好きかも? 磯の香りに包まれて、海で戯れる夢を見た。 鳥のさえずりが耳をくすぐり、眩しい太陽が瞼を焦がした。 目の前の寝顔が夢の続きを促す。 ふふ。寝たフリしてようっと。 「いい天気だ」彼が急に飛び起きる。 「愛、お散歩しよう」 綺麗なお花畑と湖を散歩して、ボートに乗った。 とても楽しい一日だった。 家に帰ると、彼は私を置いてキッチンへ入る 「料理してる時は入っちゃダメだよ」 でも、どうしても見たくて、こっそりキッチンに忍び込んだ。 強い磯の香りがしたが、そこに私の知ってる彼はいなかった。 王子さまじゃ……なかったのね……。 「ラブ(愛)、見てしまったか……」 大王烏賊(ダイオウイカ)さまが振り向いた。 まさか、そのイカリングは、あなたの……手? 私の顔が引き攣る。 「これホントは竹輪(ちくわ)なんだ。臭いを誤魔化すためウソ吐いた、ごめん」 イカリングじゃなくて、ちくわフライ……。 ってか、謝るのそっち? ふふ。 私は、おかしくなって尻尾を振った。 それからずっと、パグの私(ラブ)は大王烏賊の彼(ジャイアント スクウィッド)とラブラブの毎日を楽しんでいる。 了 image=512871181.jpg
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