0人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日は特別な日だなあ」
オレはまだ起きたばっかで眠いっていうのに、悠美が随分しみじみとつぶやいていた。
「ふぁ~あ……はふっ」
ついあくびが出ちまった。
「相巳はほんっと昔から朝弱いなー」
「うるっせ。眠ぃもんはしょーがねぇだろ」
悠美め、盛大にオレを笑ってやがる。
「あたしのこの切ない気持ち、返してよっ」
「知らねえよそんなもん」
でも悠美は笑っている。
オレたちは一緒に学校へ登校していた。
熱く激しい夏が終わってきてそろそろ秋になってきたかなと感じるこの季節。悠美は合服のセーターを着ていたが、オレは夏服のままだ。にしても悠美の三つ編みは珍しいかもしれない。
悠美が特別な日って言っていたが、それは学校の行事でもなければ街中がバーゲンセールするわけでもない。なにかの記念日だったというわけでもないが……いや、捉えようによってはこれが記念日になるかもしれない。
このオレが早起きしたんだ。特別な日には違いない。
「ねぇどっち押す?」
「言い出しっぺの悠美からだろ」
「えー、しょうがないなー。ぽちっ」
悠美の口がヘの字になっていたのは二、三秒程度だった。オレはオレで悠美がインターホンを押すころには寝ぼけも晴れてきた。
「はい」
「あ、おばさん? 悠美だよ! ほら相巳もっ」
ひじ打ち。左腕に微ダメージ。
「お、おはようございます」
「あらあら二人そろって来てくれたのねっ。琴実ー、悠ちゃん相くん来てくれたわよー」
最初のコメントを投稿しよう!