マリア

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マリア

 今日は、特別な日だ。  私の三十五回目の誕生日であり、同時に、愛する妻の誕生日でもある。その愛する妻のお腹には、私たちのはじめての、待望の、新しい命があり、そして今まさに、その命がこの世に生まれおちようとしている。私と、妻の、誕生日に。  医師から告げられた出産予定日は、私たちの誕生日から十日が経った頃だった。家族全員、あわよくば同じ誕生日になれたなら、それはとても貴重で特別なことではないかと私と妻は考えていた。だから、胎の中にいるうちから、豆粒ほどの大きさを確認できた頃から、私たちはまだ膨らまぬ妻の胎に向かって、この日に生まれてくるんだよ、と話しかけていた(そうすると良いと聞いたことがあったのだ。私たちは良いと言われることの殆どを実践した)。     
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