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路面電車のレールが尾のように伸びている。眼でそれをなぞり訊いた。
「病院は何時に出た?」
「午後三頃らしい」
「病院からここまでは一キロ半ほどだ」
「そうね、八時間半もかけて歩いてきた……」
「手前の刑務所通りは何時に?」
「鉄道ファンのブログの写真に、刑務所の前を歩く姿が偶然うつりこんでいた。光の具合から夕方四時頃に撮られたと思う。病院から刑務所前までの歩道に、このお菓子が一個落ちていた。刑務所前からさっきの工事現場までは二つ」
と、つぶれた駄菓子のガム三つをポケットから出した。
包み紙を開くと”×””○””×”と書かれている。
「菓子問屋の女性の店員に見せたら、確かにその人が代筆したものだと言ってた」
翠は手のひらのお菓子をじっと見つめた。その小さなお菓子は、どれも汚れ、潰れていた。
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