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「菓子問屋の人に聞いたら、昼に確かに峯さんが訪れたそうなの。もう自分では文字がうまく書けなくなっていたから、仕入れたお菓子の包み紙の裏に○×を書いて、糊でとめてくださいって女性の店員に頼んだそう。店員がいつものように介護タクシーを呼ぶか聞いたら、すぐそこの病院へ寄るので必要ない、と断ったらしいの」
「病院へは立ち寄ったのか?」
「ええ。確かに水曜日の午後に診察を受けている」
と、赤く腫れたまぶたをこすった。
「峯さん、たぶん、どこかで財布を落としてしまったみたい。病院内の公衆電話で介護タクシーを呼べずに困っていたって」
「そうだったのか」
「ええ。同じ病気で通院している患者さんが今日居たから、尋ねたわ。その日の峯さんのようすを見ていたらしい。……峯さんは、受付の電話でタクシーを呼んでくれないか、と頼もうとしたみたい。けれどすごく忙しそうにしていたから、あきらめて病院を出て行ったって。……きっと、迷惑をかけちゃいけないと思ったのよ。その通院仲間も自由に動けないから、とっさに電話代を貸すことができなかったそう」
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