ベガ(前照灯)

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 俺は応えた。 「そうだな……、もう……5日目だ」 「早く見つけなきゃ」  相手は息を苦しそうに、霞ませる。   「俺が代わりに現場の用事を済ませてくる」  と告げて、通話を終える前に念を押した。 「お腹に子供がいるんだ。無茶するなよ」  電話を切って俯き、平行する空気を踏みしめた。沈んだ翠の声に、口を噛む。  五軒時駅に向かう道の途中で、突如、あたりが暗くなった。  遠雷が閃くと、レールが空の澱みをうつした。 「希望って、いつもどこに棲んでいるんだ?」  重い上空の瀞(とろ)にそう訊いて、 「肝心な時に役に立った試しがない」  そう託って、雲間のトンネルとおぼしき街路をひた歩く。  錆びついたアーケード街が見えたところで、ふと何か光るのを感じ、顔をあげた。  ──真空色のなかで光を放つ、一〇〇形の前照灯だった。
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