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目覚まし時計のアラーム音が鳴った。瞼を開ける。今、ベッドには自分ひとりだけ。香苗(かなえ)はもう起きて、1階のキッチンにいる様だ。 よっこらしょ、と声を出して上体を起こす。40歳ぐらいからこの調子。ジジくさいから止めて、と妻に言われた事もあった。が、仕方がない。もうすぐ60歳。誰がどう見ても私は立派なジジイだ。歳を重ねて、体の節々が痛む様になってきた。今朝は特に左手首の関節の痛みが酷い。どこかでぶつけたのか、それともひねったのか。記憶も少し危なくなっている。昨日の朝食のメニューもパッと出てこない。 ベッドから降りようとしたところで、右脚の膝に痛みが走った。畜生、と思わず声を漏らす。その内、全身が痛むのだろうか。10代、20代、野球選手として活躍したこの身体も歳をとればこのザマか。深く息を吐く。膝の痛みを堪えながら立ち上がる。落ち込んでばかりはいられない。時計を見る。今日は10月18日。 「・・・今日は特別な日だ」 声に出して言った。特に深い意味はない。ただ、自分自身に言い聞かせたかっただけかもしれない。
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