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1
とうとうこの日がやって来た。
初めてパトロールに出る日。
姿見の前で入念に身なりを整える。
制帽をかぶり、ネクタイの結び目をなおし、装備を確認する。
警察手帳。拳銃。警棒。手錠。警笛。警察無線。
身支度はこれでいい。完璧だ。
頭の中で、職質マニュアルを反すうする。
緊張が高まって来る。
大丈夫。できる。できるはずだ。
さぁ、そろそろ出かけよう。
今日、ついに新しい世界の扉が開く。
よし! 人生初のパトロールに出発だ!
2
目出し帽をかぶった男が、老婆に近づき、手押し車のカゴからトートバッグをひったくって、一目散に逃げ出した。
俺はただちに後を追った。高校時代は陸上の短距離選手。脚には自信がある。あっという間に追いついて、男を取り押さえた。
そこに、運良く制服警官が通りかかった。
「おまわりさん! ひったくりの現行犯だ! こいつを逮捕してくれ!」
だが、警官は、妙な顔をして見ているだけで、全く動こうとしない。
「何してるんだ!? 早く逮捕してくれよ!」
すると、警官は言った。「僕は、警察官じゃなくて、これは単なるコスプレなんです」
「まぎらわしい! 家から出るな!」
俺は思わず叫んだ。
〈了〉
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