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お湯に浸かる。それは私にとって、唯一無二の至福の時間。
仕事の疲れや汗ばんだ体、それと、精神的な穢れや蟠りを幾分か洗い流してくれる。そんな力が、お風呂にはある気がする。
だから、なんとなく調子の悪いときは近所の銭湯に行くのが習慣になりつつある。
平日だと人も少なく、安心して長く入っていられる。とくに、露天風呂に誰も居ないとき、つまり自分一人の貸切状態のとき・・この露天風呂が自分の私有物のように思えてきて、「ああ、これが私の庭よ!」とまるで貴族になったような快感を味わえたりもする。
まあ、しかしそれも束の間、常連の御老人達がぞくぞくと入って来る。私の理想郷はそうそう長続きしない。
私のお気に入りは「炭酸泉」というものだ。炭酸泉とは炭酸ガス(二酸化炭素)が溶け込んだお湯のことで、冷え性・高血圧・肩凝りや血行障害の改善など、幅広い効能が報告されている。人肌に近いぬるま湯なので、サウナが苦手な私が一時間程度入っていても苦にならない。無数の気泡がしゅわしゅわと体に付く様は、高級シャンパンに自分が溶け込んでいるような感じで心地よい。一時間も浸かっていると、このシャンパン風呂と同化して、そのまま溶けていくのではないか・・とおかしな発想を抱いたりする。なんにせよ、年中肩こりに悩まされる、しがないOLの私はこの炭酸泉に日々助けられているというわけだ。
また、一人ではなく友人や家族と入る時。裸の付き合いというものは不思議なもので、普段話さないような、自分だけの秘密を口に出してしまう。皆にもそのような経験がないだろうか。私の場合、恋愛、将来、重い悩みについて・・自分自身の奥に秘めたものが口から自然と出てしまう。それは後から後悔したり、言えてよかったと満足したりと様々だが、素面では言えないことが言える場所として、銭湯は重宝している。やはり生まれたままの姿であるから、精神的にも開放的になるのだろうか。普段は寡黙な私も饒舌になる。少し、宴会の席と似ている。
シャワーのみで済ませている方も、たまには湯船や温泉に浸かってみてはいかがだろうか。自分自身や他人を見つめる機会、作用が、そこにはあるかもしれない。
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