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SCENE1:ざわつく心【樫倉 晟】
公演が始まる10分前。
最後のトイレに行く者、パンフレットを手にこれから始まることに胸を躍らせる者、主催側の最後のチェックなど、このコンサートホールは様々な音で賑わっていた。
200席ほど入りそうな広さの客席部分に、4人分の料理が並べられたテーブルが8つほどある。
樫倉晟は用意された食事に手をつけることはせずに、椅子の背にもたれながら差出人不明で送られてきた招待状の中身を見る。もう何度読んだかわからない文面。既に暗記している内容だが、気にならないはずがなかった。
『親愛なる樫倉晟様
今までの感謝を込めて、これからあなたにお似合いのプレゼントを贈ります。まずはこのチケットから。特別席をご用意しました。どうぞ、私の気持ちをお受け取り下さい。喜んでもらえることを願って──あなたの友人より』
そして、チケットと共に演目6番に丸印がつけられたパンフレットが同封されていたのだ。
ご丁寧にどうも。軽く息を吐きながら招待状をテーブルの上に放り、代わりにパンフレットを手に取った。
6番目に演奏される音楽は、今は亡き墨木明日香が好んで弾いていたものだった──
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