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「音楽って、その人の心が表れるのよ。ね、晟も弾いてみて」
そう言って半ば強引にこの一曲だけ練習させられたっけ。曲の一部分でも、たどたどしくも旋律となって耳に届いた時は感動したものだった。明日香なんて、自分のことのように喜んでいた。
そんな彼女が目の前で殺されてからおよそ一年。
自分の腕の中で徐々にのしかかる彼女の体重が、恐怖だった。口から溢れ出てくる血と共に、何かを発しようとしていたことは、ついに言葉になることなく消えた。
未だ記憶が鮮明に残る中、なぜこんな招待状が届いたのか。誰が送って来たのか。上等だ、のっかってやるよ。
晟は怒りにも似た眼差しを招待状に向けた。
開演の合図と共に、徐々に暗くなる視界。
さあ、お手並み拝見といこうか。
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