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それからどうやって帰ったのか記憶が定かでは無い。
夏子は無事帰っただろうか……
しかし、そんな思いすら遠い事に思えた。
普段の何倍もの時間と金を掛けて自宅に帰り着いたのは何時頃だったろう?
スーツは所々が破れ、膝からは血が流れていた。
俺は酒に飲まれるタイプではなかったし、こんな事は初めての事だったから既に帰宅していた夏子の方が憔悴しているようだった。
俺の服を脱がせ、取り敢えずの傷の消毒と手当てを済ませた夏子が言った。
『あなた、取り敢えずこれを飲んで!
明日からも忘れず…』
それを聞いた瞬間に俺の中で何かが弾けた。
俺は夏子から病院で処方された薬を全部取り上げると、書斎の机の引き出しに放り込み鍵をかけた。
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