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その日、社長には風邪気味なので休ませてくれと連絡してあった。
操は
「秀ちゃんの好きな桃の缶詰買って来るね」
と言って、歩いて30分ほどの町まで買い物に行った。
子供達は学校だ。
家には俺とお袋だけ。
「お袋、あのさ……」
「悩み事があるんだろ?」
「えっ!?、分かった?
ただ、話しても信じてもらえるかどうか……」
「秀俊よ。あたしがお前の事を疑った事があるかい?」
「… いや、そうだな。
いつも黙って聞いてくれた。」
「お前は小さい頃から特別取り柄があった訳じゃないけどウソだけはつかなかった。話してみな」
俺はお袋に全てを話した。それも、自分で話している事自体が事実なのかどうかすらも分からずに戸惑いながら。
「不思議な話だね」
「信じられないだろ?」
「いや、あたしも長く生きて来たけど、まだまだ知らない事や分からない事がいっぱいある
秀俊、お前が言うなら本当なんだろうね。
秀俊、辛かったな……」
「お袋…」
「泣け、秀俊。ここで泣け、操が帰って来る前にここで泣け!」
「お袋…」
俺はお袋の胸にすがって泣いた。
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