第4章 その距離に私は惑う

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水族館のお誘いメールで、次の休みを問う、とても簡潔な内容だ。 淡々としている文章なのに、黒崎さんのクスッと笑う様子が過ったのはどうしてだろうか。 話す機会が増え、自分に向けられる笑顔が増えたせいかもしれない。あわあわしながら受け答えをする私を見て、必ずクスッと笑う。 その笑顔に、私は倒れそうな程クラクラする。 あの爽やかさは一体何だ。 心地よく響くテノールの声で、足から力が抜けて座り込みそうになるし、たまに香る大人っぽい匂いも私には猛毒にしか思えない。 困っていることはもう1つ。 素直に答えたら、いつの間にか3日後に決まっていたことだ。 『デート』 その言葉が頭を過ぎり、ふるふると頭を振った。 その言葉を否定しないと、やっぱり精神衛生上良くない。 でも、千絵さんや翔太くんに言われてしまった以上、意識しないというのは無理そうだった。
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